■ 柏病院TOPページ

前に戻る

脳動脈瘤

治療方法:脳動脈瘤コイル塞栓術

脳動脈瘤コイル塞栓術について

脳動脈瘤に対する血管内手術は1990年カリフォルニア大学ロサンゼルス校において開発されたGulielmi Detachable Coil R(GDC)の出現によって急速に拡大しました。GDCはプラチナ製の柔軟なコイルがステンレス製のガイドワイヤーに接続されたものであり、放射線投透視下にマイクロカテーテルを介して脳動脈瘤内に留置されます。コイルが動脈瘤内で適正な位置で固定されるまで何度でもカテーテルから出し入れをすることが可能であり、最終的に適切な位置に留置されたことを確認した後、通電によりステンレスワイヤーより切り離します。現在10種類を超える様々なコイルが各種医療機器メーカーより販売され、臨床上使用されています。さらに最近では生体吸収性ポリマーでコーティングされたコイル(マトリックスコイルR:日本ストライカー)も使用されており、治療された動脈瘤の再開通予防に対する効果が期待されています。

photo

脳動脈瘤に対する治療選択(開頭手術と血管内治療の比較)

2002年にLancetより報告されたInternational Study of Aneurysm Therapy(ISAT)では破裂脳動脈瘤における開頭手術と血管内治療による手術成績が比較されました。開頭クリッピング術、血管内治療どちらの治療法も適当と判断された破裂脳動脈瘤患者を無作為に開頭手術群(1070例)と血管内治療群(1073例)に振り分け、治療後2ヶ月、1年後、の治療成績を評価しました。一年後の「自立不能ないし死亡」例を比較した場合、血管内治療群では801例中190例(23.7%)であり、開頭手術群では793例中243例(30.6%)と血管内治療群の予後が開頭術に勝るという結果でした。また開頭術に対して脳血管内治療の相対的 / 絶対的なリスク減少率はそれぞれ22.6% / 6.9%でした。

未破裂脳動脈瘤に対して同様の比較を行った無作為臨床試験はありませんが、現在までのさまざまなデータの蓄積により、一般的な見解としては“血管内治療で再開通(再発)の頻度がやや高い傾向にあるものの、いずれの治療法でも長期予防効果がある”と考えられています。

外科的治療適応

脳動脈瘤の外科的治療の目的は「破裂予防」と「不安の軽減」です。
慈恵医大ではこの2点を重視して外科的治療の適応を決めています。その適応基準の一つが発見時の脳動脈瘤のサイズです。
近年未破裂脳動脈瘤の破裂率に関しての研究データが数多く発表されております。また我々の施設内でのデータを解析した結果、脳動脈瘤の破裂率は“場所”と“大きさ”に相関することがわかってきました。
我々の施設では、5mm以上の大きさである脳動脈瘤に対して外科的治療の適応を検討しています。慈恵医大では経過観察を施行した脳動脈瘤の破裂に関する研究を行っております。10年間に蓄積された1960個の動脈瘤の解析の結果、2-4mmの動脈瘤は年間破裂率0.3%、5-6mmのサイズの動脈瘤は年間破裂率3.1%、7-9mmで2.9%、10-24mmのサイズは10.2%でした。従いまして、原則的には5mm以上のサイズの動脈瘤に対して外科的治療を検討しています。しかしながら、5mm未満であっても、観察中に増大、変形をきたした場合は手術を検討したほうが良いと判断しています。
また、脳動脈瘤が発見されたことで、破裂に対する懸念から日常生活に不安が生じ、それまでの日常生活に支障をきたしている場合、もしくは経過観察することに対する心配が強い場合などは、動脈瘤が小さくとも外科的治療を検討したほうが良い場合があります。
このように脳動脈瘤の外科的治療適応に関しては、様々な要因が関わりますので、時間をかけて理解していくことが大切です。

術前の評価:CTもしくはMRIにて動脈瘤が指摘された場合、血管内治療の治療戦略を立てるために手術に追加の画像検査を試行することがあります。3次元構築できる3D CT Angiographyや、3DDSA機能を利用し、術前に動脈瘤の3次元的形態を正確に評価します。

治療方法:開頭クリッピング術

開頭クリッピング術

近年の開頭クリッピング術の治療成績も向上しています。特に比較的脳の表層に存在する脳動脈瘤 (中大脳動脈動脈瘤、前大脳動脈動脈瘤)などで血管内治療が困難と判断された症例は開頭クリッピング術をお勧めすることがあります。当院では、開頭クリッピング術の際に術中血流が確認可能な手術用顕微鏡及び術中神経学的脱落症状の出現・悪化を早期に感知可能な術中神経生理学的モニタリングを用いることで治療の安全性を最大限に優先した手術を行っています。

photo

photo

まとめ

脳動脈瘤に対する脳血管内治療は、従来からの開頭手術に匹敵する治療法として認知されつつあります。当院では積極的に本治療法を導入し、治療成績の向上に努めてまいりました。また脳血管内治療のみならず、開頭クリッピング手術も年々増加しており、両者において良好な治療成績をも維持しています。患者さんにより安全な治療を提供するための最大の努力をしております。

 


▲このページのTOPへ