■ 柏病院TOPページ

前に戻る

脳動静脈奇形

脳動静脈奇形(AVM)とは

先天的な病気と言われており、母体にいるときから、既に形成されていると考えられています。本来、人間の血管の構造には、大きく分けて「動脈」と「静脈」があります。心臓から酸素をたっぷり含んだ血液は、「動脈」を通って、脳、腎臓、肝臓などの臓器に送られ、臓器の中の「毛細血管」という構造に入ります。ここで組織に酸素を送り、不要な二酸化炭素を吸収しながら、「静脈」へと流れ、心臓に血液が戻っていきます。また、この「毛細血管」を血液が通ることにより、「動脈」を通ってきた血液の圧が下がり、「静脈」を流れる血液の圧が低くなります。AVMにおいては、脳の血管構造の一部で、「毛細血管」を介さずに「ナイダス」と呼ばれる異常な血管網を介して、「動脈」と「静脈」が交通しています。このために、本来は低圧系である「静脈」の中を圧が下がっていない「動脈血」が流れる状態になっています。このために、高圧に慣れていない「静脈」が拡張して太くなったり、静脈瘤を形成して破裂をしたりすることで、脳出血やくも膜下出血を来すことがあります。また、AVMの部分は、血流が非常に多く早くなるため、周囲の正常脳への血流を奪い取ってしまうことがあり、これによる正常脳の慢性的な血流低下をきたし、二次的に脳組織の変性を来たし、痙攣発作を起こすこともあります。

photo

症状

上記のように、出血や痙攣が多く見られる症状ですが、それ以外にも脳梗塞や慢性頭痛が見られることもあります。

治療

まず、治療を行う目的ですが、致死的な結果となりうる、脳出血やくも膜下出血を予防することが、最大の目標となります。特に、一度出血を起こした動静脈奇形は、ある一定期間は再出血の危険性が高くなると言われており、より積極的に治療をお勧めしています。痙攣発作の予防に関しては、治療により発作の予防効果が望める場合もありますが、当院では痙攣予防のみを目的とした治療は、積極的には行っておりません。

治療法

一般的には、「集学的治療」と言われる、いくつかの治療を組み合わせた方法がとられます。いくつかの治療の中に「外科的摘出術」「血管内手術(塞栓術)」「放射線外科」が含まれます。

外科的摘出術

その名の通り、開頭してAVMを摘出する方法です。摘出した直後から、出血や再出血の危険性はなくなるため、もっとも短期間で根治が得られる治療法です。顕微鏡を用いながら、周囲の正常な脳組織から剥離して摘出しますが、AVM自体が血管の固まりであるため、摘出に際して非常に繊細な手技を要します。重要な機能を有する脳に存在する病変や巨大な病変などに対しては、本治療法を選択することが困難な場合もあります。

photo

血管内手術

いわゆるカテーテル治療のことを言います。細いカテーテルを、AVMを栄養している動脈へ誘導して、「塞栓物質」と呼ばれるものを使用して、AVMへの血流を遮断する方法です。「塞栓物質」は、nBCAと呼ばれる医療用の接着剤や、Onyxと呼ばれるポリマーが多く使用されます。 脳を直接触る手術ではないため、患者さんへの負担は少ない治療ですが、この治療のみでAVMを完治させることは困難です。このため、外科的摘出術や放射線外科治療の前段階の治療として、サイズを縮小させたり、血流を減少させることを目的に行われることが多い方法です。

photo
塞栓術前
photo
塞栓術後

放射線外科

ガンマナイフやサイバーナイフと呼ばれる、特殊な放射線照射の機械でAVMに放射線を当てて、消失させる方法です。脳や血管を直接触る手術ではないので、患者さんへの負担は最も少ない方法と考えられます。摘出術に向いていない病変などに対して行われることが多い治療法です。放射線を当ててから、病変が完全に消失するまでに、2-3年程度かかると言われており、この間は出血を起こす危険性があります。また、大きな病変への治療は困難であることが多く、血管内手術で病変のサイズを縮小してから、放射線照射を行う必要がある症例もあります。

photo

当院での治療

CTやMRIに加えて、脳血管撮影を施行した上で、治療方針を決定しています。出血を起こしていないものに関しては、敢えて治療をせずに、経過観察を行う場合もあります。安全に摘出可能と判断できる病変に関しては、血管内治療による塞栓術を併用して、外科的摘出術を行います。摘出術が困難ですが、治療が必要と判断される病変に関しては、塞栓術を行った後に、放射線治療を行うことをお勧めしています。 当施設には、ガンマナイフやサイバーナイフが設置されておりませんが、関連施設にご依頼させて頂き、治療前後のフォローを綿密に行っております。

治療実績

慈恵医大では、外来を受診されたAVM患者さんのうちの約6割の患者さんが、何らかの治療を受けられています。このうちの半数の患者さんが、血管内治療を行った後に、放射線外科治療を施行されています。この結果、照射後3年以上経過した患者さんの約8割で病変の完全消失が確認されています。

 


▲このページのTOPへ